とあるSEの新人時代

新人のぼく達は、臨時休業になった。仕事が無かったのだ。

正確には自社の仕事はあったが、新人を入れてくれる客先が無かった。

臨時休業と言うと社員全員が休みになったように聞こえるのだが、エンジニア1人1人の単位で休業が言い渡された。

臨時休業中は働かなくても給料が8割出た。

正確な数字は分からないが、給料の約6割は国の助成金で。残りを会社が負担する形だった。

もしも今「働かなくても給料8割出るよ」と言われれば両手を上げてバンザイをしてしまうだろう。

しかし当時はリーマン・ショックの不況の真っ只中である。ボーナスはこの年から無くなった。

先輩社員の中にも臨時休業を言い渡された者もおり、会社は不穏な空気に包まれていた。

なにより入社直後に突然「会社に来なくてもいい」と宣告されれば誰でも不安になるだろう。

学校の同級生達はぼくが休んでいる間にも働き、経験を積んでいるのだ。スタートダッシュに遅れ、このままでは社会人として差を付けられてしまう。

そんな中出会ったのがモンスターハンター3(トライ)だった。

Wii用のソフトでありながら有料でネット対応という、MHGの思想を受け継いだモンハンである。

辻本良三Pのサイン
(発売日に池袋ビックカメラで貰った辻本良三プロデューサーのサイン)

モンハンでは昔からランス使いだったぼくは、フリーになった時間で不安を紛らわすことにした。

大学へ編入した友達や、ネットの知り合いと、昼夜を問わず狩りに明け暮れる日々が続いた。

奇しくもフリーランサーになってしまったのである。

そうして1ヶ月が立つか立たないかといううちにハンターランクが100を超えてしまい、見知らぬ野良ハンターからは畏怖の念を抱かれるようになっていた。

昼夜は逆転し、たまに会社からかかってくる生存確認の電話で「今起きたのか」と呆れられる生活になっていた。

ランサーとしての腕は上がる一方だったが、エンジニアとしての腕は全く上がらなかったため、会社に言われていた資格試験を受けることにした。

基本情報技術者試験である。

基本情報参考書
(当時買った参考書)

業務に直接役に立つ物では無いが、曲がりなりにもIPAが行っている国家資格である。

情報処理技術者の資格があれば、客先に常駐する際のアピールポイントとなり、アサインされやすくなる。持っておいて損は無い。

ハンター生活の空き時間で試験勉強をし、夏の試験でなんとか合格する事が出来た。何故か5人の同期たちは全滅だった。

そして季節は冬になり、12月。

新人時代初めての仕事が始まるのだった。